離婚を考えて行動する場合、まずは離婚をするために何をしたらいいのかを考えなくてはいけません。
パートナーが浮気をしている疑いがある場合はその証拠として「不貞行為」の立証が必要になってきます。
不貞行為とは、民法第770条第1項に規定された「配偶者に不貞な行為があったとき」にある、法定離婚事由として認められる離婚原因のひとつです。いわゆる、夫婦、婚約者同士、内縁関係にある男女のどちらかが配偶者以外の異性と自由意志で肉体関係を持つ「貞操義務」の不履行に該当します。日本では、広い意味での「不倫」と呼ばれることが多く、こちらの方が聞きなれている言葉かもしれませんが法律用語では不貞行為といいます。
多くの方は不倫という言葉の方が聞きなれているかと思いますが、「不倫」「浮気」「不貞行為」それぞれ少し違いがあります。不貞行為の定義は、配偶者が配偶者以外の異性と肉体関係を持つこととされていますので不倫という大きな枠の中に不貞行為があると考えることができます。
双方が話し合いの上、合意で離婚する「協議離婚」ができない場合、裁判手続きで離婚することになります。特に、不貞行為を行ったことが発覚しそれを証拠として取得できた場合は、離婚することを進めることに加えて慰謝料請求が可能となります。決意が固まったら、手続きの順番をきちんと把握することが大切です。離婚届を提出する前に、「慰謝料」「親権」「養育費」「財産分与」については公正証書を作成することをお勧めします。
離婚形態
慰謝料
親権と養育費
財産分与
現在、法律で定められている離婚の形態は、「協議離婚」「調停離婚」「審判離婚」「裁判離婚」の4種類があります。
協議離婚とは、国内で90%近い夫婦が行う離婚方法です。市区町村役場に離婚届を提出する方法で、夫婦が離婚について同意し届け出を出せば成立する方法になります。弁護士などの第三者に介入してもらう必要がないので、費用がかからず、長期間離婚問題で悩まされる心配もありません。そのかわり、慰謝料や財産分与などについて話し合われておらず、意志疎通が難しい場合はトラブルになりかねることも思料されます。
いくら離婚を望んでいてもパートナーが応じてくれない場合は、家庭裁判所に介入してもらう調停離婚を視野に入れます。流れとしては、家庭裁判所に離婚調停の申立てをし、調停委員が双方の事情を確認、その後お互いが合意できるよう調停委員が調停案を提示していきます。裁判ではありませんので法的な効力はありませんが、話し合う必要がないため、二人での話し合いができない場合など状況によっては調停離婚で合意ができたケースも多く聞かれます。
調停委員が折り合いをつけようと調停を繰り返しても、離婚が成立しないケースがあります。その場合は、調停員の職権により、家庭裁判所が離婚を成立させることが可能となります。審判離婚においては、家庭裁判所の調停官が事実関係を調べ、離婚をするかどうかを判断することができます。日本の離婚の約10%がこの審判離婚と言われており、養育費や慰謝料、財産分与に加え、親権がどちらにあるかを決定することができます。なお、審判裁判で決定したことについて2週間以内に異議申し立てをすることは可能ですが、ほぼ皆無と言われています。
中には、審判離婚でも決着がつかなかったケースもあります。この場合は、裁判離婚を起こすことになります。地方裁判所に離婚の申立てをし、法律によって離婚を成立させるもので、裁判離婚の判決で離婚することが適当と認められた場合は、必ず離婚をしなくてはいけなくなります。ただし、これは裁判に勝った場合のことであり、もし敗訴した場合はすべての協議がなかったことになってしまいます。そのため、裁判離婚を起こす場合は、裁判官が納得できるような離婚理由が必要となります。
裁判離婚に進んでしまうと、離婚をするためには法定離婚事由が必要となります。これら5つが民法770条に定められている、裁判に必要な5つの事由です。
認諾離婚とは、被告(裁判を起こされた側)が原告(裁判を起こした側)の離婚請求を全面的に受け入れる離婚です。裁判の途中であっても、被告が認諾すれば裁判は終了し離婚が成立します。ただし、親権や財産分与といった離婚に付随する問題の申し立てが伴う場合は使えません。
和解離婚とは、離婚訴訟中に当事者同士が歩み寄り、和解によって離婚裁判を終了させる方法です。できるかぎり判決による決定ではなく、話し合いによる和解によって離婚を成立させた方が良いと裁判官が判断した場合「和解勧告」を行い、話し合いの場が持たれ両者の意思確認を行います。
認諾離婚、和解離婚のどちらにおいても調書が裁判所から作成され、市区町村に10日以内に離婚届とともに提出することになります。そして、この認諾調書と和解調書には判決と同様の効力があり、いざというときには強制執行できるという点も覚えておく必要があります。
慰謝料というのは、精神的被害に対する損害賠償です。
浮気や不倫の場合の慰謝料請求は、不法行為によって精神的苦痛を受けたことに対し請求される損害賠償なので、その行為が違法行為にあたることが前提となります。
浮気の場合の慰謝料は、浮気していたパートナーとその浮気相手から受けた精神的苦痛に対して支払われる損害賠償金となります。パートナーと浮気相手に慰謝料請求をすることは法律で認められていますが、慰謝料の金額には刑事罰のような決まりや金額の表示もありません。一般的には、夫婦関係を継続させる場合「50万~100万」、別居に至った場合「100万~200万」、離婚に至った場合「200万~300万」、など判例でも金額にばらつきがあります。
慰謝料を請求するとなった場合、裁判ではさまざまな事情を総合的に考慮して慰謝料を決定します。その要素を下記にとりまとめてみましたのでご参考にしてください。その要素の根底には、浮気によってご依頼者がどれだけ精神的な苦痛を受けたかが基準となります。
婚姻期間 | 浮気された側の気持ちへの配慮および離婚後の生活が困難になりやすい点から、婚姻期間が長いほど慰謝料は高くなる傾向にあります。 |
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浮気していた期間 | 浮気をした回数が1回の場合よりも、長期に渡って繰り返し浮気をしていた場合の方が慰謝料が高額になるケースが多いです。 |
精神的な損害 | パートナーの浮気によりうつ病になるなど、精神的苦痛による損害の発生を立証できる証拠(診断書等)がある場合、増額になる可能性があります。 |
夫婦間の子供の有無 | 夫婦間に子供がいる場合、またその人数などにより婚姻破綻による影響が大きいことが容易に予想されるため、増額になる要素となっています。 |
パートナーと浮気相手の社会的地位 | パートナーや浮気相手の収入や資産の大きさにより、慰謝料が高額になる場合もあり、増額の要素のひとつとされます。 |
結婚生活の状況 | 浮気や不倫が発覚する前の夫婦の関係が良好であればあるほど、不貞行為による夫婦関係の破綻の損害が大きいと判断され、金額が高くなる傾向があります。 |
パートナーと浮気相手の年齢差 | 不倫をしたパートナーと不倫相手の年齢差が大きいほど、年齢の高い方に主導権が強いと考えられるため、慰謝料の金額を左右する原因になります。 |
浮気相手の認識 | パートナーが既婚者であることを、浮気相手が知っていたか知らなかったかで、不貞行為に対する悪質の度合いをはかることになり、金額の増減に影響します。 |
親権は、親が未成年の子どもを監護・養育し、財産を適切に管理する権利と義務を指します。
監護権(養育権)は、親権のうち、監護・養育の部分のみが該当し、子どもと一緒に暮らして子どもの世話や教育を実質的にすることになります。
親権は、まずは夫婦間で話し合いができる場合は話し合いで決定します。未成年の子どもがいる場合は、同時に親権者も決めないと離婚することはできません。離婚届には親権者を記載する欄がありますので、親権者を記載しなければ離婚届を受理してもらえないのです。話し合いでまとまらない場合は、離婚調停を申し立て、調停委員に間に入ってもらうことになります。それでも決まらない場合、審判、裁判へと進んでいきます。
親権者は、まだ社会的に未熟な子どもの保護と成長を図っていかなくてはいけないという義務があります。子どもを養育していけるか、毎日の生活の世話ができるか等、子どもの利益を中心として考えられることになります。例えば、「子どもへの愛情」「協力者の有無」「教育環境」「経済力」「親の健康状態による監護能力」「現在の生活環境」「子どもの意思」などが挙げられ、これらを総合的に考慮して判断されます。
養育費は、家庭裁判所が養育費(または別居中であって子どもがいない場合でも、収入が少ない方が受け取る婚姻費用)を算定する際の資料に基づいて計算されます。その資料を「養育費(婚姻費用)算定表」といいます。その期間は夫婦の話し合いで自由に決められますが、原則子どもが成人するまでとなります。
たとえば、「①子どもの人数は一人②父親は会社員で年収が500万円③母親は専業主婦で収入は無し」、この場合の例ですと、養育費算定表の表1を見て、縦軸の給与500万の部分と横軸の収入ゼロの部分の交わる箇所を見ます。そうなりますと養育費は「4~6万円」となることがわかります。養育費期間は夫婦で自由に決められますが、原則は子どもが経済的自立をするまでとなっています。
財産分与とは、夫婦が婚姻中にお互い協力して築いた財産を、離婚の際に清算・分配する制度です。財産分与は、「清算的財産分与」「扶養的財産分与」「慰謝料的財産分与」の3つに分けられます。
夫婦が婚姻中に共同で築いた財産を、それぞれの貢献度に応じて平等に分配し清算する財産分与です。離婚原因には左右されません。
離婚した後、片方が生活に困窮する事情がある場合、一方が生計を補助する扶養的な目的により、財産が分与される財産分与です。
配偶者の有責行為(離婚の原因をつくったこと)によって離婚に至った場合、精神的苦痛を償うための慰謝料を、相手に請求することができる財産分与です。
離婚を焦って急ぐと、財産分与についての取り決めがきちんとなされないことにもつながります。そのため、法律上認められている権利として双方でしっかりと取り決めをすることはとても重要となります。
財産分与の対象となるのは、夫婦が婚姻期間中に築いたすべての財産で、これを「共有財産」といいます。一方で夫婦それぞれの個人的な財産とみなされ、財産分与の対象とならないものを「特有財産」といいます。財産分与の決定は、夫婦で話し合って決めるのが通例です。しかし、離婚問題と付随することから、調停で決定することもできますし、調停でまとまらない場合は審判で決定されることとなります。
財産分与の対象となるもの(共有財産)かどうかは、財産の名義ではなく実質的に判断されることになります。婚姻中に購入した不動産や家財、夫婦片方の名義である預貯金や車、退職金や年金など、夫婦が協力して取得した財産が対象となります。
財産分与の対象とならないもの(特有財産)としては、婚姻前から片方が所有していた財産や婚姻中に発生した相続による不動産、趣味や浪費でつくった借金など、「婚姻中であっても夫婦の協力とは無関係に取得した財産」が該当します。
財産分与は、離婚と同時に取り決めを行うのが一般的です。しかし、離婚時に取り決めを行わなかった場合は、離婚後でも請求を行うことが可能です。ただし、離婚が成立してから2年以内という期限がありますので注意が必要です。
離婚は、話し合いで解決できる場合とできない場合があり、その環境や悩んでいる内容も様々です。ご依頼者による判断では当事者としての主観が入ることもありますので、博通では第三者の立場だからこそできるサポートをさせていただき、より良い方向へ進むことができるようアドバイスも行っております。また、離婚による交渉や裁判に強い弁護士事務所をご紹介させていただくことも可能ですので、お一人で解決することが難しいと思われる場合は、まずは一度ご相談ください。
お悩みや心に迷いがあった場合、まずはご連絡ください。私共で手助けできることがあるかもしれません。